校訓 「高く 正しく 強く」

第3号(6月号) 平成27年6月3日発行   校長 関田重雄

 
始末(しまつ)について
 数年前から江戸時代に興味を持ち、当時書かれた文章を読んだり、江戸の様子が分かる場所を 訪ねたりしています。討ち入りで有名な赤穂浪士の泉岳寺を昨年の12月14日に訪れました。 かなりの人出で大変でしたが、いまだにあるその人気ぶりには驚かされました。また、歴代の将 軍の菩提寺である芝の増上寺を昨年一般公開に合わせて訪ねました。都会の中に静寂が漂い、東 京タワーとの対比に不思議な思いをしたものでした。  さて先月の連休に、シリーズで出ている江戸学の本を読み直してみました。その中で「始末」 についての考察があり、大変示唆に富んでいました。この場合の始末の意味は、「無駄遣いしな いこと。倹約すること。」という意味で使っています。以下に概略を紹介します。  『江戸時代というより、つい50年前の昭和30年代までの日本人の生活様式は何事もほどほ どにというものだったが、高度経済成長を経て、消費こそ美徳という間違った考え方がはびこり 使い捨ての時代になってしまった。今日のように豊かでなかった高度経済成長期以前の日本では 不用品を再利用することはあたりまえの事であった。バブルの崩壊後リサイクル、リユースの考 え方が定着はしてきたが、以前はリサイクルという考え方は今のような運動ではなく、生活シス テムの一部であったので、リサイクルに相当する言葉すらなく、皆が普通にやっていることをあ えて表現するための特別な用語など、意味も必要もなかったのである。私どもは、戦後数十年を かけて叩きつぶし、簡便な使い捨て文化に切り替えようとしてきたのである。そのツケがいまま わってきているのだ。(後略)』  江戸時代や明治、大正時代とでは人口が違うし、地球温暖化の問題も当時はなかったので、単 純に比べるのはおかしいという反論もあると思います。そのことを否定することはできないとは 思いますが、自分たちの先祖が残した美徳、日本人としての生き方に学ぶ姿勢は大切なことであ ると思います。  教育基本法の(教育の目標)第二条の五に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我 が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」 とあります。「伝統と文化」を尊重する教育を推進する際には,例えば次のような事項について 指導することが考えられると指摘されています。 (1)国家・社会の発展に尽くしてきた先人の業績や働きや努力について進んで学ぶことに  より、我が国や郷土の歴史に対する理解と関心を深め、優れた文化財や文化遺産の意  義を理解し、それらを継承・発展しようとする意欲や態度を養う。 (2)わが国や郷土の豊かな自然環境を理解し地域や国土の環境保全に尽くそうとする。 (3)家庭や学校,地域社会や国家の一員としての自覚をもち、よりよい社会の形成に進ん  で参画・貢献しようとする態度を養う。  このことを踏まえ学習指導要領に各教科においての改善点が示されています。上記の(2)の 中にある「環境保全に尽くす」という事を考えた時、学校で、家庭で、地域で担うことはたくさ んあると思います。環境教育の合言葉に「考えは地球規模で行動は足元から」ということが言わ れています。どんな小さなことでも積み重ねれば大きな成果を生みます。「小さなことからコツ コツ」と取り組む姿勢が今までも今後も求められていくと考えます。「始末」のすすめを読む中 で中学校教育についての今後について考えさせられました。
【バックナンバー】 [4月号] [5月号] [6月号] <平成26年度> [4月号] [5月号] [6月号] [7月号] [1学期終業式号] [9月号] [10月号] [11月号] [12月号] [1月] [2月]